はじめに
個人的に、VS Codeは最高のエディタだと思っています。でも、ちょっと気になることがあるんですよね。
それは「テレメトリ」という話。
VS Codeのソースコード自体はMITライセンスでオープンソース。でも、Microsoftが配布しているバイナリには独自のライセンスが適用されていて、テレメトリ(使用状況のデータ収集)が有効になっている。
正直なところ、普段使いで困ることはほとんどない。でも「自分の操作データがMicrosoftに送られている」という事実が、なんとなく気持ち悪いと感じる人もいるはず。
そこで登場するのがVSCodium。GitHubスター29,000超え。VS Codeの完全オープンソース版で、テレメトリが無効化されている。見た目も使い心地もVS Codeとほぼ同じ。
30代になって思うのは、ツールの選択は自分の価値観で決めていいということ。プライバシーを重視するなら、VSCodiumという選択肢があるんですよね。
VSCodiumとは
VSCodiumは、MicrosoftのVS Codeソースコードから自動ビルドされた、完全オープンソースのコードエディタです。
重要なポイントとして、これは「フォーク」ではない。VS Codeのコードをそのまま使って、Microsoftの独自要素(テレメトリ、ブランディング、独自ライセンス)を除いた状態でビルドしている。
つまり、VS Codeの機能はそのままに、プライバシーに配慮したバージョンということ。
| 項目 | VSCodium | VS Code |
|---|---|---|
| ライセンス | MIT | Microsoft独自ライセンス |
| テレメトリ | 無効 | 有効(デフォルト) |
| ソースコード | オープン | オープン |
| バイナリ | オープン | クローズド |
| 拡張機能 | Open VSX | Microsoft Marketplace |
2025年12月時点で、開発から7年以上が経過。コミット数1,700以上、貢献者123名のコミュニティで維持されています。
特徴・メリット
1. テレメトリが完全に無効
これがVSCodiumを選ぶ最大の理由。
VS Codeはデフォルトでテレメトリが有効になっていて、使用状況のデータがMicrosoftに送信される。設定で無効化はできるけど、そもそもバイナリレベルでテレメトリのコードが含まれている。
VSCodiumは、ビルド時点でテレメトリ関連のコードを除外している。送信する機能自体が存在しないので、完全にプライバシーが守られる。
2. 純粋なMITライセンス
VS Codeのソースコードはオープンソース(MIT)だけど、ダウンロードできるバイナリはMicrosoftの独自ライセンス。
VSCodiumは、ビルドされたバイナリもMITライセンス。企業で使う場合も、ライセンス的な心配がない。
3. VS Codeと同じ使い心地
見た目も操作感も、ほぼVS Codeと同じ。
- 同じショートカットキー
- 同じUI構成
- 同じ設定ファイル(settings.json)
- 同じ拡張機能の仕組み
VS Codeユーザーなら、移行にほとんど時間がかからない。
4. マルチプラットフォーム対応
すべての主要OSに対応:
- macOS: Intel/Apple Silicon両対応
- Windows: x64/ARM64
- Linux: deb、rpm、AppImage、snap、tar.gz、Flatpak
配布形式が豊富なので、好みの方法でインストールできる。
5. 自動ビルドで常に最新
GitHubのワークフローで毎日自動ビルドが実行される。VS Codeの新バージョンがリリースされると、すぐにVSCodiumも更新される。
本家に追従するのが速いので、「古いバージョンのまま」という心配がない。
インストール方法
Windows
wingetが一番簡単:
winget install VSCodium.VSCodium
もしくはChocolateyで:
choco install vscodium
Scoopでも:
scoop bucket add extras
scoop install vscodium
macOS
Homebrewで:
brew install --cask vscodium
Linux(Ubuntu/Debian)
aptリポジトリを追加してインストール:
# GPGキーを追加
wget -qO - https://gitlab.com/nicepkg/vscodium-deb/-/raw/master/pub.gpg \
| gpg --dearmor \
| sudo dd of=/usr/share/keyrings/vscodium-archive-keyring.gpg
# リポジトリを追加
echo 'deb [ signed-by=/usr/share/keyrings/vscodium-archive-keyring.gpg ] https://download.vscodium.com/debs vscodium main' \
| sudo tee /etc/apt/sources.list.d/vscodium.list
# インストール
sudo apt update && sudo apt install codium
Linux(Fedora/RHEL系)
# リポジトリを追加
sudo rpmkeys --import https://gitlab.com/nicepkg/vscodium-rpm/-/raw/main/pub.gpg
printf "[gitlab.com_nicepkg_vscodium]\nname=VSCodium\nbaseurl=https://download.vscodium.com/rpms/\nenabled=1\ngpgcheck=1\nrepo_gpgcheck=1\ngpgkey=https://gitlab.com/nicepkg/vscodium-rpm/-/raw/main/pub.gpg\nmetadata_expire=1h" | sudo tee /etc/yum.repos.d/vscodium.repo
# インストール
sudo dnf install codium
Flatpak
flatpak install flathub com.vscodium.codium
snap
sudo snap install codium --classic
基本的な使い方
VSCodiumの使い方は、VS Codeとほぼ同じ。コマンドがcodeではなくcodiumになるくらいの違い。
起動
codium . # 現在のディレクトリを開く
codium /path/to/project # 指定したディレクトリを開く
codium file.txt # 特定のファイルを開く
settings.jsonの場所
VS Codeとは設定ファイルの場所が異なる:
- Linux:
~/.config/VSCodium/User/settings.json - macOS:
~/Library/Application Support/VSCodium/User/settings.json - Windows:
%APPDATA%\VSCodium\User\settings.json
VS Codeから設定を移行
VS Codeの設定をそのまま使いたい場合:
# Linux
cp -r ~/.config/Code/User/* ~/.config/VSCodium/User/
# macOS
cp -r ~/Library/Application\ Support/Code/User/* ~/Library/Application\ Support/VSCodium/User/
# Windows (PowerShell)
Copy-Item -Recurse "$env:APPDATA\Code\User\*" "$env:APPDATA\VSCodium\User\"
拡張機能の移行:
# インストール済み拡張機能の一覧を出力
code --list-extensions > extensions.txt
# VSCodiumに一括インストール
cat extensions.txt | xargs -L 1 codium --install-extension
拡張機能について
ここがVSCodiumの「唯一の注意点」という話。
Open VSX Registry
VSCodiumは、Microsoftの公式マーケットプレイスではなく、Open VSX Registryを使用している。
理由は、Microsoftのマーケットプレイスは「Visual Studio製品専用」という利用規約があるため。VSCodiumはMicrosoftの製品ではないので、使用が制限されている。
Open VSXはEclipse Foundationが運営するオープンソースの拡張機能レジストリ。主要な拡張機能は大体揃っている。
一部の拡張機能が使えない
ただし、以下の拡張機能はMicrosoft製品限定で、VSCodiumでは使えない:
- Remote - SSH: Microsoftの公式拡張
- Remote - Containers: 同上
- GitHub Copilot: Microsoft/GitHub製品
- Python: Microsoft製(ただし代替あり)
- C/C++: Microsoft製
これが結構痛いポイント。特にRemote系の拡張機能を使っている人は要注意。
代替拡張機能
使えない拡張機能の代替:
# Python
Open VSXの「Python」(ms-python.python)の代わりに
「Pylance」は使えないが、「Pyright」が代替になる
# リモート開発
Remote - SSHの代わりに、SSH FS等を検討
Microsoftマーケットプレイスを使う方法(非推奨)
どうしてもMicrosoftマーケットプレイスを使いたい場合、product.jsonを編集する方法がある:
// ~/.config/VSCodium/product.json
{
"extensionsGallery": {
"serviceUrl": "https://marketplace.visualstudio.com/_apis/public/gallery",
"itemUrl": "https://marketplace.visualstudio.com/items",
"cacheUrl": "https://vscode.blob.core.windows.net/gallery/index",
"controlUrl": ""
}
}
ただし、これは利用規約的にグレーゾーン。自己責任で。
実践的なユースケース
プライバシー重視の開発環境
企業のセキュリティポリシーで「外部へのデータ送信禁止」がある場合、VSCodiumは良い選択肢。
テレメトリがないので、安心して使える。
オープンソースプロジェクトでの利用
OSSプロジェクトで「純粋なオープンソースツールだけを使いたい」という方針がある場合。
VS Codeのバイナリは厳密にはオープンソースではないが、VSCodiumは完全にオープン。
教育機関での利用
学生や教育者向けに、ライセンスを気にせず使える環境を提供したい場合。
MITライセンスなので、配布も改変も自由。
VS Codeの設定を試す
VS Code本体を汚さずに、設定の実験をしたい場合。
VSCodiumを別環境として使って、問題なければVS Codeに反映する、という使い方もできる。
VS Codeとの使い分け
個人的な使い分け:
VS Codeを使う場合
- Remote SSHでサーバー開発
- GitHub Copilotを使いたい
- 特定のMicrosoft製拡張機能が必要
VSCodiumを使う場合
- プライバシーを重視
- 純粋なOSS環境を維持したい
- 企業のセキュリティポリシーに対応
正直なところ、普段使いでテレメトリが問題になることはほとんどない。でも「気持ち悪い」という感覚は分かる。VSCodiumはその選択肢を提供してくれる。
よくある質問
VSCodiumはVS Codeより遅い?
いいえ、パフォーマンスは同等。
同じソースコードからビルドしているので、動作速度に違いはない。
設定は互換性ある?
ほぼ互換性あり。
settings.jsonの内容はそのまま使える。ただし、Microsoft製拡張機能に依存した設定は動かない可能性がある。
アップデートはどうする?
インストールに使ったパッケージマネージャーで更新:
# apt
sudo apt update && sudo apt upgrade codium
# brew
brew upgrade --cask vscodium
# winget
winget upgrade VSCodium.VSCodium
テレメトリが無効って本当?
本当。
ビルドスクリプトを見れば分かるが、テレメトリ関連のコードはビルド時に除外されている。GitHub上で全て公開されているので、自分で確認もできる。
まとめ
VSCodiumを選ぶ理由:
- 完全オープンソース: バイナリもMITライセンス
- テレメトリ無効: データ収集の心配なし
- VS Code互換: 使い勝手はほぼ同じ
- マルチプラットフォーム: Windows、macOS、Linuxに対応
- 常に最新: 自動ビルドで本家に追従
注意点もある:
- 一部拡張機能が使えない: Remote系、Copilotなど
- Open VSX使用: 拡張機能の品揃えがやや異なる
結局のところ、VS Codeの機能を90%以上そのままに、プライバシーを守れるのがVSCodium。Remote開発やGitHub Copilotを使わないなら、乗り換えても特に困らないと思います。
「テレメトリが気になる」「純粋なOSSを使いたい」という人には、一択ですね。