はじめに
Webページをスクレイピングしたいとき、一番面倒なのが「本文以外のゴミ」をどう処理するか、という話なんですよね。
広告、サイドバー、ナビゲーション、関連記事...正直なところ、欲しいのは本文だけなのに、HTML全体を見ると余計なものが多すぎる。これを手作業でCSSセレクタ指定して取り除くのは、サイトごとに違うから現実的じゃない。
そんな悩みを一発で解決してくれるのがReadabilityです。
これ、実はFirefoxの「リーダービュー」機能に使われているのと同じライブラリの独立版なんですよ。あのボタン押すとページがスッキリ読みやすくなるやつ。あの技術がそのまま使えます。
とはいえ、読むより触った方が早いと思います。広告っぽいdivやナビゲーションを混ぜたHTMLを、Readabilityが本文だけどう抜き出すか実際に見られるサンプルを用意したので、先に挙動を見たい方はこちらからどうぞ。
Readabilityとは
ReadabilityはMozillaが開発・メンテナンスしている、Webページから本文コンテンツを抽出するためのJavaScriptライブラリです。
GitHubで8,600スター以上を獲得しており、Firefoxのリーダービュー機能のコアとして長年使われてきた実績があります。
個人的には、「あのFirefoxが実際に使っている」という点が信頼度高いと思っています。毎日何百万人が使うブラウザで動いている技術ですからね。
公式リポジトリ: https://github.com/mozilla/readability
特徴・メリット
1. 本文抽出の精度が高い
機械学習ではなく、ヒューリスティック(経験則ベース)なアルゴリズムで本文を検出します。
- テキストの密度
- HTML構造(article, main, contentなどのタグ)
- クラス名やID(content, article, mainなど)
- リンクの密度(広告はリンクが多い傾向)
これらを総合的に判断して、「ここが本文だろう」と推定してくれます。
30代になって思うのは、ヒューリスティックって意外と馬鹿にできないということ。完璧ではないけど、大多数のサイトでちゃんと動くなら実用上は十分なんですよね。
2. 多機能な抽出結果
parse()メソッドを呼ぶと、以下の情報がまとめて取得できます。
- title: 記事タイトル
- content: 本文HTML
- textContent: プレーンテキスト版の本文
- excerpt: 抜粋(メタディスクリプション的なもの)
- byline: 著者情報
- siteName: サイト名
- lang: 言語
これ、意外と便利なんですよ。特にtextContentがあるおかげで、LLMに食わせるときにHTMLタグを別途除去する必要がない。
3. セキュリティを意識した設計
公式ドキュメントでも強調されていますが、信頼できない入力に対してはDOMPurifyなどのサニタイザーと併用することが推奨されています。
抽出したHTMLをそのまま表示する場合、XSS対策は必須。これを最初から明記してくれているのは好感が持てますね。
インストール方法
npmからインストールできます。
npm install @mozilla/readability
ブラウザで使う場合はそのまま動きますが、Node.jsで使う場合はjsdomが必要です。ReadabilityはDOMオブジェクトを引数に取るので、Node.jsではjsdomでDOMを生成してから渡します。
npm install @mozilla/readability jsdom
Readabilityのサンプルを動かす
下のサンプルは、document.body.innerHTMLでナビゲーション・広告っぽいdiv・本文(記事)を組み立てたページを用意し、new Readability(document.cloneNode(true)).parse()で本文だけを抽出するデモです。要点だけを抜き出すと、こんな流れになります。
// ページ本文らしきHTMLを用意する(nav・広告・記事を混在させる)
document.body.innerHTML = `
<nav>ホーム | ランキング | 会員登録</nav>
<div class="ad">【広告】今すぐクリック!</div>
<article>
<h1>本文抽出のはなし</h1>
<p>Readabilityは...(本文がここに続く)...</p>
</article>
`;
// isProbablyReaderableで「抽出できそうか」を先に判定
const readable = isProbablyReaderable(document);
// parse()で本文・タイトル・抜粋などをまとめて取得
const article = new Readability(document.cloneNode(true)).parse();
console.log(readable); // true
console.log(article.title); // "本文抽出のはなし"
console.log(article.textContent); // navや広告を除いた本文だけ
実際に動かせるのが下のサンプルです。上側のテキストエリアにページのHTML(ナビゲーション・広告・記事本文を含む)が入っているので、自由に書き換えて「Readabilityで抽出する」を押してみてください。isProbablyReaderableの判定結果と、parse()が返すtitle・excerpt・textContentが下に表示されます。
ナビゲーションや広告のdivを本文の中に何個増やしても、titleとtextContentには記事の段落だけが残るはずです。逆に、本文の段落を1つだけにして極端に短くすると、charThreshold(デフォルト500文字)を下回ってparse()がnullを返す挙動も確認できます。isProbablyReaderableはその判定をparse()より先に軽く行うための関数で、リーダービューボタンを出すかどうかの判定に使えます。
基本的な使い方
ブラウザでの使用
ブラウザ環境では、documentオブジェクトをそのまま渡せます。
import { Readability } from '@mozilla/readability';
// 現在のページから本文を抽出
const article = new Readability(document.cloneNode(true)).parse();
console.log(article.title); // 記事タイトル
console.log(article.content); // 本文HTML
console.log(article.textContent); // プレーンテキスト
重要: document.cloneNode(true)でクローンを渡すこと。Readabilityは渡されたDOMを破壊的に変更するので、元のページに影響を与えないためです。
Node.jsでの使用
Node.jsではjsdomと組み合わせて使います。
import { Readability } from '@mozilla/readability';
import { JSDOM } from 'jsdom';
async function extractArticle(url) {
// HTMLを取得
const response = await fetch(url);
const html = await response.text();
// jsdomでDOMを生成
const dom = new JSDOM(html, { url });
// Readabilityで本文抽出
const reader = new Readability(dom.window.document);
const article = reader.parse();
return article;
}
// 使用例
const article = await extractArticle('https://example.com/article');
console.log(article.title);
console.log(article.textContent);
コンストラクタオプション
Readabilityのコンストラクタには、いくつかのオプションがあります。
const reader = new Readability(document, {
debug: false, // デバッグログを出力するか
charThreshold: 500, // 記事に必要な最小文字数
keepClasses: false, // クラス属性を保持するか
disableJSONLD: false, // JSON-LD解析をスキップするか
});
charThresholdは地味に便利で、短すぎるコンテンツを「これは記事じゃない」と判定させることができます。
事前チェック: isProbablyReaderable
「このページ、そもそもリーダービューで読めるの?」を事前に判定できます。
import { isProbablyReaderable } from '@mozilla/readability';
if (isProbablyReaderable(document)) {
const article = new Readability(document).parse();
// 本文を表示
} else {
// リーダービュー非対応と判断
}
これ、ユーザーにリーダービューボタンを見せるかどうかの判定に使えます。
実践的なユースケース
1. 記事保存アプリ(Pocketクローン)
import { Readability } from '@mozilla/readability';
import { JSDOM } from 'jsdom';
import DOMPurify from 'dompurify';
async function saveArticle(url) {
const response = await fetch(url);
const html = await response.text();
const dom = new JSDOM(html, { url });
const reader = new Readability(dom.window.document);
const article = reader.parse();
if (!article) {
throw new Error('記事の抽出に失敗しました');
}
// XSS対策としてサニタイズ
const purify = DOMPurify(dom.window);
const cleanContent = purify.sanitize(article.content);
// DBに保存
await db.articles.create({
url,
title: article.title,
content: cleanContent,
excerpt: article.excerpt,
savedAt: new Date(),
});
return article;
}
2. RSSリーダーでの全文取得
RSSフィードの本文が抜粋だけのとき、元ページから全文を取得する。
async function fetchFullContent(feedItem) {
const dom = new JSDOM(await fetch(feedItem.link).then(r => r.text()), {
url: feedItem.link,
});
const article = new Readability(dom.window.document).parse();
return {
...feedItem,
fullContent: article?.textContent || feedItem.content,
};
}
3. LLM用のコンテンツ前処理
Webページの内容をLLMに要約させる前に、ノイズを除去する。
async function prepareForLLM(url) {
const dom = new JSDOM(await fetch(url).then(r => r.text()), { url });
const article = new Readability(dom.window.document).parse();
if (!article) {
throw new Error('コンテンツを抽出できませんでした');
}
// プレーンテキストを返す(HTMLタグ不要)
return {
title: article.title,
text: article.textContent,
wordCount: article.textContent.split(/\s+/).length,
};
}
コスパ的に、LLMに無駄なトークンを食わせるのは避けたいですからね。
4. ブラウザ拡張機能でのリーダーモード
// content.js
chrome.runtime.onMessage.addListener((request, sender, sendResponse) => {
if (request.action === 'extractArticle') {
const article = new Readability(document.cloneNode(true)).parse();
sendResponse(article);
}
});
まとめ
Readabilityは、Webページから本文を抽出するという「地味だけど面倒な作業」を一発で解決してくれるライブラリです。
個人的なおすすめポイントをまとめると:
- Firefoxで実績あり: 毎日何百万人が使う機能と同じ技術
- シンプルなAPI: new Readability(doc).parse()で完了
- textContentが便利: LLM連携に最適
- セキュリティ意識が高い: 公式がサニタイズを推奨している
スクレイピングやブックマークアプリ、RSSリーダーを作るなら、これ一択ですね。
正直なところ、自前で本文抽出ロジックを書くのは時間の無駄です。Mozillaが何年もかけて磨いてきたアルゴリズムを使わせてもらいましょう。QOL上がりますよ。