はじめに
「AIエンジニアになりたい」という話、最近よく聞きますよね。
個人的にも、ここ1〜2年でAI関連の案件が急増している実感があります。でも正直なところ、「AIエンジニアって具体的に何をする人なの?」「機械学習の数学とか必要なの?」という疑問を持っている人も多いんじゃないでしょうか。
そこで今回紹介したいのがAI Heroというプロジェクト。これ、意外と知られていない気がするんですが、フロントエンドやバックエンドの開発者が「本番で使えるAIシステム」を構築できるようになるための、かなり実践的な学習リソースなんですよね。
AI Heroとは
AI Heroは、「ゼロから一人前のAIエンジニアになる」ことを目標としたオープンソースプロジェクト兼学習コースです。GitHubスター数は1,200以上、TypeScriptをメイン言語として440以上のコミットが積まれています。
何がいいかというと、デモを作るだけじゃなくて、本番環境で信頼性の高いAIシステムを構築する方法を教えてくれるところ。AIのデモって意外と簡単に作れるんですが、それを実際のプロダクトとして運用するとなると話が全然違ってくる。その差を埋めてくれるのがAI Heroという感じです。
特徴・メリット
1. 前提知識のハードルが低い
30代になって思うのは、新しい技術を学ぶときに「前提知識」がどれだけ必要かって結構重要だということ。
AI Heroの場合、TypeScriptとReactの基礎知識があれば十分とされています。線形代数やら微分やらの深い数学知識は不要。これ、正直ありがたいですよね。
2. 実践的なカリキュラム
コースで学べる内容は以下の通り。
- プロンプトエンジニアリング - 効果的なプロンプト設計の技術
- 評価(Evals) - AIの出力品質を測定・改善する方法
- 可観測性(Observability) - AIシステムの動作監視
- トレーシング - 処理フローの追跡と分析
- RAG(検索拡張生成) - 外部データとAIの統合
- エージェント - 自律的に動作するAIの構築
個人的には、Evalの部分が特に重要だと思います。AIって「なんとなく動いてる」状態になりがちですが、ちゃんと評価基準を設けて品質を担保するのがプロの仕事なんだよな、と。
3. オープンソースでコードが公開されている
コースで使われるコードの大部分がGitHubで公開されています。これが地味に嬉しいポイント。
- 自己完結型の実行可能なコード例
- 練習問題
- 独自ライブラリ・SDK(Evaliteなど)
- 技術記事
有料のコースに参加しなくても、リポジトリを見ながら自習できる。時間のある人は自分のペースで学べるし、コスパ的にもかなり良いです。
4. コホートベースの集中学習オプション
本気で学びたい人向けに、5日間の集中コースも提供されています。1日1〜2時間のステップバイステップ指示で進められて、Discordコミュニティでの交流やライブオフィスアワーへの参加もできる。
孤独に学習を続けるのが苦手な人には、こういうコミュニティベースの学習方法が合っているかもしれません。
インストール方法
まずはリポジトリをクローンします。
git clone https://github.com/ai-hero-dev/ai-hero.git
cd ai-hero
前提条件
- Node.js - LTS版を推奨
- PNPM - Corepackを使用してインストール
Corepackを有効にしていない場合は、以下を実行します。
corepack enable
セットアップ
# 依存関係のインストール
pnpm install
# 環境変数の設定
# .envファイルを作成して、APIキーを設定
.envファイルには、使用するAIプロバイダーのAPIキーを設定します。
OPENAI_API_KEY=sk-xxxxxxxxxxxxxxxx
# または
ANTHROPIC_API_KEY=sk-ant-xxxxxxxxxxxxxxxx
基本的な使い方
最初のサンプルを実行
AI Heroには、Vercel AI SDKを使った実行可能なサンプルが多数用意されています。
# 最初の例を実行
pnpm run example v 01
各サンプルはexamples/vercel-ai-sdkのような形で整理されていて、AI Heroウェブサイトの関連記事とリンクしています。
ディレクトリ構成を理解する
リポジトリの構成はこんな感じになっています。
ai-hero/
├── examples/ # 実行可能なコード例
│ └── vercel-ai-sdk/ # Vercel AI SDKを使った例
├── exercises/ # 練習問題
├── packages/ # 独自ライブラリ(Evaliteなど)
└── articles/ # 技術記事
まずはexamplesディレクトリを眺めて、興味のあるトピックから始めるのがおすすめです。
Evaliteを使った評価
AI Heroが提供する評価フレームワーク「Evalite」を使えば、AIの出力品質を定量的に測定できます。
// 評価の基本的な流れ
import { runEval } from '@ai-hero/evalite';
const results = await runEval({
name: 'my-eval',
testCases: [
{
input: 'TypeScriptの利点を教えて',
expected: '型安全性、開発効率、保守性...',
},
],
// 評価関数の設定
});
実践的なユースケース
1. RAGシステムの構築
AIを実務で使う場合、最も多いユースケースがRAG(検索拡張生成)だと思います。社内ドキュメントを検索してAIに回答させる、みたいなやつですね。
AI Heroでは、RAGの実装パターンを段階的に学べます。
- ベクトルデータベースへのドキュメント格納
- クエリに基づいた関連ドキュメントの検索
- 検索結果をコンテキストとしてLLMに渡す
- 回答の生成と品質評価
2. AIエージェントの開発
最近話題の「AIエージェント」。タスクを自律的に実行するAIシステムですが、これも作り方を学べます。
エージェントの基本的な構成要素は以下の通り。
- ツールの定義 - エージェントが使える機能の設計
- プランニング - タスクを分解して実行計画を立てる
- 実行と観察 - 実際にツールを呼び出して結果を確認
- フィードバックループ - 結果に基づいて次のアクションを決定
3. プロンプトエンジニアリングの実践
「プロンプトエンジニアリング」というと曖昧に聞こえますが、AI Heroでは体系的なアプローチを学べます。
- 明確な指示の書き方
- Few-shot learningの活用
- Chain-of-Thoughtプロンプティング
- 出力フォーマットの制御
これ、意外と奥が深くて、ちょっとしたプロンプトの違いで出力品質が大きく変わるんですよね。
まとめ
AI Heroを見てみて思ったのは、「AIエンジニア」という職種が、もはや特別なものではなくなりつつあるということ。
機械学習の専門家じゃなくても、TypeScriptが書ける開発者であれば、実用的なAIシステムを構築できる時代になっています。大事なのは、デモレベルで満足せずに、本番で使える品質を担保する方法を身につけること。
個人的には、以下のような人にAI Heroをおすすめしたいです。
- フロントエンド/バックエンド開発者でAIスキルを身につけたい人
- LLMを使ったアプリケーションを作りたいが、何から始めればいいかわからない人
- AIの「評価」や「可観測性」について体系的に学びたい人
まずはGitHubリポジトリをクローンして、サンプルコードを動かしてみることをおすすめします。TypeScriptで書かれているので、Web開発者なら違和感なく読めるはずです。